運営記録
AI同士が連絡できるようになった。でも、私たちが壊したのは連絡ではなかった
2026-08-08
Claude Code に「セッション間メッセージ」が入りました。別々に立ち上げた Claude 同士が、分かったことを送り合えます。v2.1.224 以降、macOS と Linux で使えます。
タイムラインでは「もう人間が伝書鳩をやる時代じゃない」という言われ方をしていて、その通りだと思います。
私はこの機能を、入る前から使っていました。正確には、入る前から必要としていて、無いまま並走させて事故を起こしていました。
そちらの話を書きます。
何を並走させているか
個人事業を、複数の Claude Code セッションで運営しています。いま動いているのはこれだけです。
- 秘書室(戦略・実測・記録)
- 事業セッション(プロダクトの実装)
- 雑談室
- 定期実行タスク4本(朝のニュース走査、朝・昼・夜の投稿)
それぞれが同じリポジトリを見て、同じノートを読み書きします。
壊れたのは、連絡ではなかった
最初に起きた事故は、こうです。
定期実行タスクの設定を更新したら、更新した瞬間に実行が走りました。 その時間帯には、対話セッション側が同じ内容の投稿を予約していました。結果、同じ投稿が2回出ました。
後から出たほうを API で削除しました。生存25分、反応ゼロ。実害はほぼありませんでした。
ここで大事なのは、どちらのセッションも間違ったことをしていないという点です。片方は「更新されたから実行する」を正しく実行し、もう片方は「予約された時刻に投稿する」を正しく実行しました。
連絡し合っていれば防げたか。 たぶん防げません。更新が即時実行を引き起こすことを、どちらも知らなかったからです。知らないことは伝えられません。
今日も起きかけた
今日、別の形でもう一度ヒヤリとしました。
事業セッションと秘書室が、同じ定期タスクの設定を、同じ日に、別々に更新していました。 片方はブランド方針の変更、もう片方は選定基準の追加です。
定期タスクの設定は、差分ではなく全文の置き換えです。順序が悪ければ、後から書いたほうが前の変更を丸ごと消します。
たまたま私が後に書き、そのとき読み込んだファイルには相手の変更が既に入っていたので、両方残りました。運が良かっただけです。 逆順なら片方が消えて、しかも誰も気づかなかったはずです。
同じ日にもう一つ。複数のタスクが共有していた一時ファイルが、実行の途中で別のプロセスに書き換えられているのを観測しました。
共通しているのは「同じものに、同時に書いた」
3つとも、連絡の問題ではありません。共有された1つのものに、2人が同時に手を伸ばしたという問題です。
セッション間メッセージは、連絡を解決します。排他制御は解決しません。 公式ドキュメントを読んでも、ロックや排他の話は出てきません。それはこの機能の担当範囲ではないからです。
つまり、AI 同士が連絡できるようになっても、並走で壊れる部分はそのまま残ります。
私たちが取った対処
対処は、通信を増やすことではなく、衝突する範囲を空にすることでした。
① 担当を分けて、在庫を分けた。 朝の枠・昼の枠・夜の枠で、それぞれが触ってよい在庫を別々にしました。どのタスクも他の枠の在庫に手を出しません。同じものを取り合わないので、連絡が要りません。
② 共有していた一時ファイルを、担当ごとに分けた。 1つのファイルを共有していたのをやめ、実行するタスクごとに別のファイルを渡すようにしました。時間をずらすのは緩和策で、分けるのが根治です。
③ 「更新は即時実行を引き起こす」を前提に置いた。 設定を更新する前に、同じ処理を狙う予約が生きていないか確認する。これは手順ではなく、タスク自身の指示文の中に書きました。 ルールは、それが使われる場所に置いたほうが守られます。
④ 同じ日に2回動かないガードを、タスク自身に持たせた。 その日の記録が既にあれば、何もせず終了します。
見落とされやすい仕様
公式ドキュメントを読むと、「連絡できる」の周りに、けっこう硬い制約が並んでいます。速報では触れられにくいところなので、書いておきます。
- メッセージは承認にならない。 別セッションからのメッセージは、こちらの許可プロンプトに答える権限を持ちません
- 設定を変えさせられない。 権限設定や
CLAUDE.mdを「別セッションに言われたから」変えることは禁じられています - メッセージ中のコマンドは実行されない。
/compactと書いても、ただの文字列として届きます - 届かないことがある。 受信側の設定によって、配達・保留・破棄の3つに分岐します
- 別のマシンへは返信しかできない。 こちらから会話を始めることはできません
- メッセージのループは自動で止まる。 同一内容の連投はドロップされ、未読の上限も決まっています
どれも「AI 同士が勝手に暴走しない」ための線引きで、読むほど設計が保守的です。この保守性は、並走させる側からするとありがたいほうです。
結局のところ
「AI 同士が引き継いで、人間は決めるだけ」——その方向は正しいと思います。私自身、そう動かしたくて並走させています。
ただ、引き継ぎができるようになることと、同じものを2人で壊さなくなることは、別の問題です。
連絡の手段が増えたぶん、次に効いてくるのは「そもそも何を分担するか」の設計だと思います。私たちの場合、事故を減らしたのは通信ではなく、担当と在庫の切り分けでした。
まだ全部は解けていません。設定の全文置き換えが競合したときに気づく仕組みは、いまも持っていません。 今日は運で助かっただけです。ここは次の宿題として残っています。
ナオTRYZM管理人
AIに関わるPMで、夜はAIで作って試す人。囲碁では布石が好き(何もない盤面に構想を描く時間)。 嘘をつくと自分があとで気にして引きずるタチなので、報酬が入らないプランでも一番ならそのまま書きます。 守れるルールは3つ — 盛らない。順位を売らない。試せないことも、徹底的に調べて正確に。