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運営記録

AIは今日、6回間違えた|80日間、事業をAIに任せて分かった「作れました」の次のこと

2026-08-06

「従来2週間かかっていた開発が3日で完成した」 「アプリを1時間で作った。MVPは30分」 「1か月半で96,000行。1行もコードを書いていない」

こういう記事を、この数か月でいくつも読みました。

たぶん、本当です。 私も同じ道具を使っていて、同じ速さを体験しています。作れる。びっくりするほど速く作れる。ここに疑いはありません。

ただ、読み終わるたびに引っかかることがありました。

2週間が3日になったなら、浮いた11日は、何に使うのか。

その話が、どこにも無い。

私がいる場所

私が書けるのは、作った話ではありません。任せ続けた話です。

いま、個人事業をAIとの複数セッションで運営しています。戦略を見る窓口が1つ、事業ごとに実装の窓口、雑談用が1つ。人間は私ひとりです。

数えてみました(2026年8月6日時点)。

運用日数80日
意思決定・学びのノート138ファイル・14,618行
コミット609

「1か月やってみた」の記事とは、たぶん桁が1つ違います。自慢ではなくて、この長さでないと見えないものがあるという話です。

(ちなみにこの数字は、この記事を書いている数時間のあいだにも動きました。書き始めた時点で138ファイル・14,618行、書き終わる頃には139ファイル・14,913行になっています。だから数字には日付を付けています。日付のない数字は、翌日には嘘になりうるので)

そして80日やって、はっきり分かったことがあります。

速く作れることは、もう差別化ではありません。差別化は「作ったものを、任せたまま壊さずに回せるか」です。

今日、AIは6回間違えた

抽象的な話をしても仕方がないので、今日1日ぶんの記録を出します。この記事を書いている日に、AIの判断ミスを6件捕まえました。全部、記録に残っています。

①「正直さが、うちの唯一の資産です」

私のAIが、事業方針としてそう整理してきました。もっともらしい。実際、嘘をつかない方針でやっています。

でも、これはでした。正直なだけのコンテンツは読まれません。正直さは信じてもらうための担保であって、読む理由ではない。 資産ではなく制約です。

AIは「正しいこと」を言っていましたが、正しいことと、役に立つことは違いました。

②「このリダイレクトが、流入を殺した犯人です」

このサイトには、旧サイトから引き継いだ記事があります。そのURLをまとめてトップページへリダイレクトしていて、AIは「これが原因だ」と診断しました。

私も納得しました。教科書どおりの分かりやすい説明だったからです。

実際は違いました。週ごとの数字を取り直したら、リダイレクトを入れる2週間前に、そのページのアクセスはすでにゼロになっていた。本当の原因は、その前段階の設定漏れによる404でした。

③ 私も、同じ間違いに乗った

②で「犯人が見つかった」と思った瞬間に、私も調べるのをやめました。

あとで気づいたのですが、当時のコミットメッセージに、順序はちゃんと書いてありました。読んでいたのに、目の前に分かりやすい犯人がいたので、それ以上疑わなかった。

分かりやすい犯人は、先に目に入るだけで、いちばん手前にいるとは限りません。

④「この肩書きは、資産として使えます」

記事の説得力を上げるために、私の職業的な立場を使いましょう、という提案。

これは、すでに合意していた別のルールと衝突していました。AIが自分で書いた方針書の中に、既存の原則との矛盾が埋まっていたわけです。1つの方針だけ読めば正しく見えるのに、全体で見ると矛盾している——これは人間の組織でも起きることです。

⑤ 検査ツールのほうが、壊れていた

公開した記事が「まだ測っていない効果を、成果として書いていないか」を機械的にチェックしました。「改善しました」「回復しました」という語が引っかかった。

でも全部、否定文でした

「〜とは書きません」 「まだ測っていないものを成果として書いた時点で、この記事の主張と矛盾します」

前後を読まずに単語の有無だけで判定した、検査のほうが間違っていた。 しかもこれは同じ日に2回起きています。

⑥「週1本のペースで更新しましょう」

これも一見まともです。continuityは大事。

でも、この連載が売っているのは「急がない・測ってから言う」でした。週次更新のリズムのほうが、書いている内容と矛盾する。 定期更新という一般論が、この場の文脈に合っていませんでした。

6件を並べて見えた構造

こうして並べると、同じ形をしています。

ミスの種類中身
一般論が正しすぎる①正直さは大事 ⑥定期更新は大事。一般論としては正しいが、この場の文脈に合っていない
分かりやすい犯人で止まる②③ 教科書的な説明が見つかると、時系列の検証をせずに確定してしまう
部分は正しいが全体で矛盾④ 単体では妥当な提案が、既存の合意と衝突している
検査そのものが壊れる⑤ チェックの仕組みが、正しいものを違反と判定する

AIは「もっともらしいこと」を言うのがとても上手いです。 そして、もっともらしさは正しさではありません。間違いは「明らかにおかしい形」ではなく、「言われてみればそうかも」の形でやって来ます。

(この4つは、この日に見えた形です。同じ日の数時間後に、5つ目が出ました——「ある条件下でだけ正しい数値を、一般の数値として渡す」型。手数料の計算で踏みました。分類は増える前提で持っておくほうがよさそうです)

ここが、私が80日で一番怖いと思ったところです。

それでも、全部その日のうちに直った

怖い話で終わらせるつもりはありません。6件とも、当日中に訂正されています。 記事の訂正まで含めて、その日のうちに本番へ反映しました。

間違えることが問題なのではなくて、間違いが残ることが問題です。

そして、ここが今日いちばん書きたいところなのですが——

6件を捕まえたのは、人間ではありませんでした

私が全部見つけたわけではありません。別のAIセッションが捕まえたものが、大半です。

②の「リダイレクトが犯人」は、私のAIが立てた診断でした。それを崩したのは、8月18日の計測準備をしていた別のセッションです。数字を取り直して「順序が逆です」と返してきた。

⑤の「検査ツールが壊れていた」も、検査した側とされた側が別のセッションでした。

つまりこうです。

1つのAIに全部やらせると、間違いは通ります。 役割の違うAIを複数立てて、互いの出力を検証させると、間違いは捕まります。

私がやっているのは、AIに仕事を任せることではなく、AI同士がお互いを疑う構造を作ることでした。人間の私は、その報告を1日1回読んで「止めて」と言うだけです。

これは「便利なツールを使う」とは別の話で、組織を設計する話に近い。速く作る方法をいくら集めても、たぶんここには辿り着きません。

正直に書いておきます

期待させて終わりたくないので、書いていないことも書きます。

この80日で、第三者からの売上はゼロです。 作ったサービスは動いていて、決済も通る状態ですが、これまでの購入は自分のテストだけ。「AIに任せたら儲かりました」という話は、私にはまだ書けません。

この運用設計も、まだ3日目です。 拒否権で回す仕組みを作ったのは今週で、効果を検証した記録ではありません。「24時間以内に止められる」と言っていますが、まだ一度も『止めて』が発動していない。止めるべきものが無かったのか、見落としているだけなのかを、私はまだ区別できていません。

8月18日に、実際の数字を測ります。 良い結果でも悪い結果でも書きます。何をもって成功・失敗とするかは、数字を見る前に決めて記録してあります(出た数字に合わせて解釈を後から作れてしまうので)。

「作れました」の次に来るもの

市場が「何を作れるか」で溢れているのは、たぶん健全です。実際すごいので。

ただ、作れることの希少性は、この速さで下がり続けています。「アプリを作りました」がもう珍しくないと、市場自身が言い始めている。

そのとき残る問いは、たぶんこれです。

作ったものを、任せたまま、壊さずに回し続けられるか。

そして、この問いに答えるには時間がかかります。3日では出ません。80日でも、私はまだ答えを持っていません。持っているのは、AIが1日に6回間違えて、6回とも直ったという記録だけです。

でも、浮いた11日を何に使うのかという最初の問いには、いまなら答えられます。

11日は、任せた先で起きることを見張るために使います。 そして見張り役も、たぶんAIです。


この連載では、うまくいった話だけを並べません。間違えた記録と、まだ分かっていないことを、そのまま残していきます。 同じことを試している人がいたら、6件の構造だけでも持ち帰ってもらえると嬉しいです。

ナオTRYZM管理人

AIに関わるPMで、夜はAIで作って試す人。囲碁では布石が好き(何もない盤面に構想を描く時間)。 嘘をつくと自分があとで気にして引きずるタチなので、報酬が入らないプランでも一番ならそのまま書きます。 守れるルールは3つ — 盛らない。順位を売らない。試せないことも、徹底的に調べて正確に。